A little Cafe Times

日々のちょっとしたこと

アルストロメリアの『幸福論』

はじめに

来たる3/9, 10にはシャイニーカラーズの1stライブが開催されます。

THE IDOLM@STER SHINY COLORS 1stLIVE│EVENT│THE IDOLM@STER OFFICIAL WEB | バンダイナムコエンターテインメント公式サイト

会場が舞浜アンフィシアターということで、シンデレラの1stを思い返す部分がありつつ。あれから5年も経つのですね……。
当然のように各種先行は落とされてしまい泣く泣くLV鑑賞ですが、初の全ユニット合同ライブ。しっかりと見届けたいものです。

もちろんゲームの方もやっているので、各ユニットの曲はショートバージョンながら毎日のように聴いている訳です。
ただCDをほとんど買えずじまい*1でフルを聞けず、それではまずいと数日前にようやく各種音源を買い揃えたのでした。

聴き流していると夢咲きの「なんばーわん!」が2番だけコール指定なのはそういうことだったのか〜とか、Multicoloredがいいポジションだな〜とか、色々思うわけですが。
そんな中で刺さってきたのが、アルストロメリアの「アルストロメリア」。通称(?)歌ストロメリア。
2番Bメロの甘奈パートで完全に落とされました。そういうのもっとやってほしい。

メロディーで落とされてしまったことと、以前から「曲調に似合わない難解な歌詞」という評判、そして箱推しであること。
最大限のエモをライブで感じるためにも、歌ストロメリアを一度噛み砕いてみようという記事です。
既に多くの方が挑んでいますし、あくまでも自分の解答として。

以下にはアルストロメリアのイベントエピソード、「満開、アルストロメリア流幸福論―つなぐ・まごころ・みっつ―」の内容も含まれています。
読んでいない方は今すぐゲームにログインしてエピソード解放してきてください。メニュー->アルバムからいけます。ショップで解放アイテムも買えるので今すぐ。

アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス) | バンダイナムコエンターテインメント公式サイト

アルストロメリア」の花が咲くまで

タイトル「アルストロメリア」、歌唱「アルストロメリア」。作詞は鈴木静那さん、作編曲は森本貴大さん。

www.youtube.com

ユニット紹介はこちら。キャラの大まかな特徴が掴めるので是非。

ALSTROEMERIA (アルストロメリア) | アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス)

以下の歌詞部分では次のような凡例でパート振りを示します。

  • 甘奈 : グリーン
  • 千雪 : ブルー
  • 甜花 : イエロー
  • 3人 : ピンク

1番

早速1番から始めていきましょう。

Aメロ-1

気絶しそう しどろもどろ
花ざかりタレイア
まともな神経(あたま)が繋がらない アダージョみたい

いきなりポップとは正反対な『気絶しそう しどろもどろ』というフレーズから始まります。
そんな状態に陥ったのが、『花ざかり』な『タレイア』。
タレイアはギリシア神話の女神。wikipedia:タレイア_(カリス)
学校でも多くの友達に囲まれ、天真爛漫な甘奈を指しているように取れます。
甜花と一緒にアイドルを目指した女神様。簡単には思うようにいかなくて、『まともな神経(あたま)が繋がらない』。
アダージョ』も流れ出して、まさにお葬式状態です。wikipedia:アダージョ

Aメロ-2

凛々しくいよう 強くなろう
天と地がディストーション
夢をみることも忘れてしまうのかな

『凛々しくいよう 強くなろう』。
家でのんびり、ゲーム三昧。そんな彼女が飛び出した新しい世界。
アイドルとしてデビューするからには、偽ってでも「らしく」いないといけないのかもしれない。
宙に浮かんだ不安定な思考は、目指したかった『天』と自分らしい『地』のどちらも歪めてしまう。
いつしか、妹との『夢をみること』すらも『忘れてしまう』かもしれないという不安が襲います。

Bメロ

ふくらむ蕾が傷だらけでも
優しくそっと
手をとってくれますか

雑貨屋さんから、アイドルに。
優しさと笑顔ですくすくと育った『ふくらむ蕾』は、どちらも諦めきれずに『傷だらけ』。
1人では困難なこの先の道も、ユニットとして、アルストロメリアとして、『優しくそっと手をとってくれますか』。

サビ

チュ チュ チュ 幸福論 誕生
アイデンティティー見つけた

アルストロメリアの花
咲いた 咲いた Silent Love


過去も未来も諸事情も
キミ色にぜんぶ染まりたい

一途なわたし フィロソフィ
咲いた 咲いた Silent Love

前のメロディーで投げかけられた問の答えが『チュ チュ チュ』。
言葉にせずとも気持ちは伝えられる。
彼女達の『幸福論』は、『アイデンティティー』を『見つけた』ことから始まるのです。
そうやって、ユニット『アルストロメリア』の『花』は見事に『咲いた』のでした。

花は沢山の要素を吸いこんで、いくつもの日を重ねて、ようやく見事に咲くもの。
三者三様の『過去』、変わりゆく『未来』、そして姉妹だったり前職持ちだったりの『諸事情』。
多彩な『キミ色』だからこそ、『ぜんぶ染まりたい』。手を取りたい。
『一途なわたし』を貫ける、それがもっともと言える『フィロソフィ』。
わたしらしく歩みながら、3人で手を取りあう。
こうして『幸福論』は形になるのです。

2番

彼女たちらしい『幸福論』が1番にて提示されました。
続けて2番。

Aメロ-1

ニヒリズムも ペシミズムも
退屈がテンプレ
まっ赤なりんごは落ちてこない 木の上のまま

ニヒリズム』、『ペシミズム』はどちらも哲学用語。
それぞれ「虚無主義」、「悲観主義厭世観」を意味します。wikipedia:ニヒリズム wikipedia:ペシミズム
共通するのは、負の感情。
プラスに動くものは存在しない、『退屈がテンプレ』な『フィロソフィ』。
『木の上』に成った『まっ赤なりんご』も、『ニヒリズム』や『ペシミズム』なら『落ちてこない』。
でも、彼女達が手にしたのは『幸福論』。違った捉え方が出来るのです。

りんごで思い出すのが、イベントエピソード第6話、「私達の幸福論」。
夏の縁日に3人が繰り出すお話です。以下はそのスチル。*2

幼き日の甘奈と甜花は射的に挑戦しますが、いくら頑張っても景品が獲得できなかった。
そんな記憶が残る甘奈に、千雪はもう一度やってみようと提案し、甜花からのアドバイスを思い出します。
変わりゆく双子と、それを繋ぐお姉さん。
3人だからこそ1つになれる。
甘奈は見事に景品を撃ち落とし、過去から一歩踏み出したのでした。

双子で育ててきたりんごの木。
実を付けることは出来たけれど、収穫は叶わない。
そこに優しい手は差し伸べられ、暖かさに包まれたその果実は多くの人に届けられるのです。

Aメロ-2

もしも いつか やがて きっと
初めから
エンドロール
照れかくしなんてあまのじゃくすぎるかな

『もしも いつか やがて きっと』と、続く言葉もなく副詞が羅列されます。
意味を取ってみると、だんだんと時間・可能性の面で現在に近づいています。
今まで通りの生活では考えもしなかった、アイドルという夢の道は『きっと』大きく羽ばたくのです。

『初めからエンドロール』。
Aメロでは唯一3人歌唱パートの入るフレーズです。
『エンドロール』には3人の名前が記されているのでしょう。
別々の人生を歩んできた大崎姉妹と千雪が、1つの物語として繋がった瞬間。
『エンドロール』の先には、新しい「3人の」物語が待っています。

再び千雪に戻って『照れかくし』が『あまのじゃくすぎる』。
イベントエピソード前半ではとりわけ2人との距離感があるように感じられます。
2人の間柄を壊してしまいたくない、お姉さんとして振る舞わなければいけない。
でも、そうじゃない。以下はイベントエピ第4話、「私をもっと知りたくて」よりプロデューサーの台詞。

はは、そんな顔してるぞ
……千雪と甘奈と甜花でアルストロメリアなんだ


千雪ひとりじゃないし、甘奈と甜花ふたりでもない

アルストロメリアは3人揃ってこそアルストロメリア
そう気付いたからこそ、対等な関係で居られる。
偽りのお姉さんではなくて、ユニットの1人としてありのままでいい、と気付かせてくれたのです。

Bメロ

ねじれた茎(バルブ)が不完全でも
かまわずずっと
そばにいてくれますか

『ねじれた茎(バルブ)』はユニットそのものを指すのでしょうか。
それが『不完全』だと言います。
イベントエピ第2話「天と地、屈折」でも触れられていますが、甘奈は今を楽しんでいて、未来のやりたいことが曖昧でした。
アイドルを目指すきっかけや、その曖昧さこそが『不完全』な要因だったのです。
上記で見てきたように、他の2人だって『不完全』。
でも、もうそんなことは気にしなくていい。
『かまわずずっとそばにいて』くれる3人なのだから。

サビ

ギュ ギュ ギュ 悲劇的 最高
ジャッジメントがくだらない

アルストロメリアの葉は
まわる まわる Cipher

そして、『ギュ ギュ ギュ』と3人はまとまったのでした。
『悲劇的』なことだって『最高』に思える。
決めつけられた『ジャッジメント』だって『くだらない』。
輪になって『まわる』ことで途切れのない、立派な花に。
『不完全』な『茎(バルブ)』は、『葉』が鍵(『Cipher』)になって支えあって。
アルストロメリアという花は見事に咲き誇るのです。

間奏〜

落ちサビ

サチュレーションあげてよ
バイオリズム 果てまで
もっとドキドキしよう

ソロパートとしては最後のフレーズ。
『サチュレーション』。限界を超えたいと、自ら言った甜花。
『バイオリズム』。「今」という生き方を『果てまで』続けたいと願う甘奈。
『ドキドキ』。雑貨屋にアイドル、それぞれを全力で楽しもうとする千雪。
3人の『幸福論』は、ここに示されたのです。

ラスサビ

チュ チュ チュ 幸福論 誕生
アイデンティティー見つけた
アルストロメリアの花
咲いた 咲いた Silent Love


ギュ ギュ ギュ 悲劇的 最高
ジャッジメントがくだらない

アルストロメリアの葉は
まわる まわる Cipher


Yes No 好きでも嫌いでも
キミにならぜんぶ捧げたい
重なるしぐさ シンパシー
咲いた 咲いた Silent Love
愛が 咲いた Silent Love

最後のサビです。
1,2番のサビの振り返りから。彼女たちが示した『幸福論』を再確認できます。

そして新規フレーズ。3人揃って歌い上げます。
『Yes No 好きでも嫌いでも キミにならぜんぶ捧げたい』。
どんな感情だって、『ぜんぶ捧げたい』。
受け入れてくれるし、分かり合えるから。
その証拠に、『しぐさ』は『シンパシー』かのように『重なる』のです。

こんな感情・関係を表すとしたら、何と呼ぶのだろう。
それが『愛』で、それが『Silent Love』。
言葉が無くても伝わり合う、家族のようなユニットはこうして産まれたのです。

もっと「アルストロメリア

ここまでで歌詞の解釈をイベントエピソードを交えながら行ってきました。
以下はそれを補足する諸々について。

解釈軸に関して

上述の解釈は、「ユニットが結成され、アルストロメリアの花という形で1つになる」ことを主軸において進めました。
ただ、歌詞中にでてくる『キミ』の対象、Bメロ終わりの投げかけられる言葉の相手など議論の余地があります。
しかし、後述するように楽曲中に「3」を表す要素が多く含まれており、ユニット3人内で完結しているというのを暗に示していると考えられます。
そのため要所要所の揺らぎはありますが、主軸に関しては3人以外の外的要素が極力入らない形をとっています。

アルストロメリアの花

曲名、ユニット名、そしてロゴデザインの元(推測)にもなっているアルストロメリアの花についても触れてみましょう。
解説や写真はwikipedia:アルストロメリアだったり、アルストロメリアはどんな植物?Weblio辞書だったりアルストロメリア | 花だよりに。

注目すべき点としては、花の構成と花言葉
まず前者。花をよく観察してみると、内側に3枚、外側に3枚と計6枚の花びらで構成されていることがわかります。
また、内側の1枚に寄り添うのは、外側の2枚。
ユニットとしてのまとまりと、1人が咲くには2人があってこそ、という様子と見事にマッチするのです。
また、花言葉。花自体の花言葉に「未来への憧れ」というものがあります。
ユニットはまだ歩みだしたばかり。今後の活躍に添えられる言葉としてはぴったりでしょう。

フレーズ単位の解釈考察

解釈で詰まったポイントにいくつか触れておきます。

  • アダージョみたい』 : アダージョ自体の単語の意味だと「くつろぐ、ゆったり」。時間が進まない、進歩がないとも取れるが、『みたい』と続くので曲名と断定。
  • 『天と地がディストーション』 : 天("てん"か・"あま"な)と地("ち"ゆき)のディストーション。交わることのなかった3人がアイドルとして出会ったこととも考えられるが、前の文脈と若干ズレるか。
  • 『悲劇的 最高 ジャッジメントがくだらない』 : 最大級問題フレーズ。言葉遊びで「悲劇的?さあ行こう」とも取れそう。『ジャッジメント』はつまらないものなのか、下されないものなのか。

メロディー

細かいコード進行や進行による効果などは門外漢なので、かなり感覚頼りな語りになることにご注意ください。

歌詞の意味の面だけでなく、メロディーの面でも3という数字は強く意識されています。
言わずもがなな『チュ チュ チュ』や『ギュ ギュ ギュ』、『咲いた 咲いた Silent Love』、『まわる まわる Cipher』の3単語フレーズ。
次にBメロ。非常に自然な形で3拍子のワルツ調に変化します。
また、サビ。コードのルート音を追いかけると、D-E-C#-F#-E*3という進行が短いスパン(2小節ずつ)で繰り返されていることが分かります。
その繰り返し回数は3つ。その後にD-E-C#と3つのコードでフレーズの区切りを迎えます。
そして全体。Aメロ・Bメロ・サビという形で3つのパートで構成されています。
更に1番、2番それぞれでA-1,A-2,Bという3パート構成*4、サビパートもラスサビ前後で3回ずつ*5になっています。
これ以上にも気付けていない要素があると思われ、3がてんこ盛りです。

もちろん、3だけではなくて様々な工夫が他にもなされていると感じられます。
個性がでているのは1番Bメロに千雪、2番Aメロに甜花、2番Bメロに甘奈。
千雪は言うまでもなく大人な佇まい。甜花も楽器数が少ない物静かな雰囲気。
そして冒頭でも述べた大問題、全ての元凶甘奈。
ワルツで千雪みたいな大人っぽさを表現しつつも、パーカッションの元気らしさが混ざり合う。
それでいて歌うのは不安さをさらけ出す歌詞。
メロディーによる外見と、歌詞による中身。その違いが同時に現れる、まさに甘奈といえるパートでしょう。*6

他にも色々ありますが収集がつかないので箇条書き。

  • 2番Aメロの甜花パート終わりのキラキラ。
  • 2番サビ前のベース音。
  • 落ちサビからラストサビへの流れ。
  • 終わりで一回静止するところ
  • アイデンティティー見つけた』で音数が戻るところ

楽曲「アルストロメリア」と"3"という数字

上記でも多くの箇所で触れてきましたが、まとめとして。

どの要素をとっても出てくる"3"の数字。
メロディー、歌詞、そして花の特徴。
また、イベントエピソードでも3色の経糸で作られる経錦(タテニシキ)が用いられました。
単に3人組ユニットということだけでは語りきれないほどに多く出現します。

双子と1人のお姉さんの組み合わせというユニット。
外からの印象はどうしても2+1になりがちでしょう。
でも、そうではなくて3人でアルストロメリアなのであって、3人だからこそこの幸福論は生まれたのだと言い切るのです。
それを強く支えてくれる曲が、「アルストロメリア」なのです。
初めてのユニット曲。初めてだからこそ伝えたいユニットの意味。
初めてにふさわしい、最大限までにユニットの魅力が詰まった曲なのです。

おわりに

軽く終わらせるつもりがかなり重めな記事になってしまいました*7。ほんまか。
自分なりの答えが出せたので、何とか前向きにライブが迎えられそうです。
カップリングである『ハピリリ』も『アルストロメリア』と同じく鈴木静那さん作曲とのことで、ゆるく解釈したい気持ち。可能なら夏コミとかに持っていきたいですね。

この記事を書くにあたって、極力人の意見を入れたくなかったので他の方の解釈記事を見ずにいました。
何とか書き終わったので、照らし合わせながらもう少し解釈を深めたいです。
何にしてもこんな難しい歌詞だと思わなかった。

今週はWUGちゃんのラストライブも控えていて楽しみが盛りだくさんですね。
シャニのLVもWUGちゃんの一般発売もまだ間に合うので、みんなで最高の週末にしましょう。

<ライブビューイング>THE IDOLM@STER SHINY COLORS 1stLIVE FLY TO THE SHINY SKY|e+(イープラス)
wug-portal.jp

*1:イルミネのシングルは積んだオタクから頂きました。クレイシス現場で。感謝。

*2:実はこのイベントの際、ゲームから離れていてこのsSSRを持っていなかったり……。復刻頼む……

*3:Dの部分、C#かはたまた別ルート…?C#なら3音で構成されていて更にエモさが増しそうです

*4:1番は『気絶しそう』『凛々しくいよう』『ふくらむ』、2番は『ニヒリズムも』『もしも』『ねじれた』の部分

*5:『チュ』『過去も』『ギュ』、『チュ』『ギュ』『Yes No』。

*6:全人類、「ゆらゆらアクアリウム」TRUEの「To the future A」を見て欲しい(n度目)

*7:1日2日で終わらせるつもりが1週間経ってた